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夏が好きだ。 いや正確には夏の夕暮れに涼しげなバーの中にいてのんびりとカクテルを啜っている時間が好きだ。 うだるような熱気がドアの向こうにあるのを感じながら、ひんやりとした透明なアルコールドリンクが喉元をつぅっと落ちていくのを感じるのが好きなのだ。 バーは静かに落ち着いた雰囲気の店がいい。暗すぎるのは好ましくない。 冷房は効きすぎていない方がいい。音楽は静かに流れている程度がいい。 カクテルは酸味の利いた、甘すぎないものがいい。 そして僕はGeorge's Barに来る。 そして決まってダイキリを頼む。 夏の夕暮れにダイキリを飲んでいる髭面の男がいたら僕かもしれない。気が向いたら一杯おごってくれ。 |
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「メイプルシロップを使うレシピもあるんですか?」 「いや、ちょっと思いつきまして数年前から使ってるんですよ。お口に合いませんでしたか?」 「いえ、とても美味しいです。最後のダークラムも」 カウンターに肘をついて扉の外にとぐろを巻いている熱気を感じながらダイキリを啜っていると、ようやく吉祥寺の町も涼しげになって来たようだ。かわりに僕の気分はゆっくりと熱くなってくる。その静かな交代劇が好きなのかも知れない。 |
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